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リーダー対談──わがままな二代目

このごろちょっと、
気持ちが行き詰まってる感じなんですわ。

こんどはなんです?

どうもしんどいんですよ、
専務っていう肩書きになってから。

重荷なんですか、
肩書きが。

ああ、
まぁそんな感じかもわかりませんわ。
いままで好き勝手やってきたのに、
息子っていうだけで専務にさせられてしもたんやから。

「させられた」っていう言い方はちがうでしょ。
ゆくゆくは社長になるわけやし。

まだ準備がでけてへんってことですやろ。
覚悟っちゅうか、ね。
そんなもんが足りてません。
それは認めますわ。

社員さんとなんかあったんですね。
あぁ‥‥
また誰か辞めましたか。

実はそうなんですわ、
吉岡がね。

吉岡さんですか‥‥。
こう次から次と幹部に辞められるとキツいですね。

ぼくの不徳の致すところです。

本気でそう思てますか?

え、えぇ‥‥

思てないようですね。

いやぁ~ぼくはねぇ、
部下に対してはねぇ、
水瓶(みずがめ)のような存在でありたいと思ってるんですが‥‥

はぁ‥‥?
水瓶ですか。

社員のね、
わがままや過ちや悩みや痛みをね、
丸ごと受け入れることのできる器の大きい人間のイメージですわ。

立派な話ですやん。

いまのぼくとは正反対やって思ってるでしょ。

‥‥たしかに、
意外な感じはしますわな。

ええですよ、どう思われても。
でもね、
そういう人間がぼくの理想でしたんや。

ないものねだりですね。

‥‥。
あいかわらずキツですねぇ~先生は。

ま、冗談ですけどね、
理想っていうくらいなら、
もちろんそこに向かって努力してたんでしょうな。

いや、それが、
あいかわらず忙しくてそれどころじゃなくて‥‥

やっぱりね。

仕事に熱すぎるんですかね。

そういう問題じゃないでしょう。

じゃあどういう問題ですか。

あなたはなんでも自分が最優先だから難しいんですよ。
自分が腹いっぱいになってからでないと、
社員に分けてやろうとしないところがある。
いや、
たとえ自分が腹いっぱいでも冷蔵庫にしまいこむタイプかな。

誰でもそんなもんじゃないっすか。

そこまで乾いちゃいないでしょうね、
世の中は。

あのね、先生、
いまの連中はね、ぬるいんですよ。
ゆとりだかなんだか知りませんがね、
ぼくらは根性の世代でしょ。
闘ってナンボじゃないですか。
ぼくが飢えているときには誰も恵んでくれたりしませんでしたよ。

それはあなたにかわいげがないからですよ。

そんなこと言われなくったってわかってますよ。
だから、
かわいげのないやつは自分でガツガツしないとダメなんでしょ。

また屁理屈ですか。
わたしと屁理屈でやりあうんですか。

あ、すいません。
でも、
だってそうでしょ。

だったらつまらん理想なんて掲げてないで、
死ぬまでガツガツしてたらどうですか。

いや‥‥それがね、
近ごろスケベ欲が衰えてきました。

それはおめでとう。
性欲の減退は人格者への第一歩ですから。

そうなんですか?
だったらうれしいなあ。

ほんとうならね‥‥

けっきょくぼくはどんな人間になりたいんでしょう?

それは知りませんが、
あなたは自分がどんな人間であるかということよりも、
何を手に入れたかを問題にするタイプです
よね。

なるほど。
今はそうかもしれません。
でも、
マズローっていう人が言ったように、
最後は自己実現欲求に行き着くと思うんですよ。

行き着きますかね。

どういう意味です?

欲望の大きさに比例して足りないものが増えていく。

え?

足りないものがあるうちは、
自己実現なんて絵空事だってことですよ。

むずかしいんですけど、
そんなもんですか。

あなたの場合はそうでしょうね。
まだまだ満たされない欲望が大きくて、
心がギタギタしているでしょ。
だから、
欲しいものがあるならかたっぱしから手に入れる。
やりたいことがあったらそれもやってしまう。
話はそれからでしょうね。

いや、でもね、
スケベ欲は衰えてきたって言うてますやん。

衰えたんじゃなくて、
いまの女に飽きただけでしょ。

ちゃ、ちゃいますよ。
まじめに経営のことを考え出したんですわ。
ほんとうに水瓶のような大きな器になりたいんです。

では、
女と遊ぶ以外にしたいことがありますか。

ないですね。

‥‥(-_-;)
ハッキリしててよろしいがね、
しかし、
あなたが女に金を使うところを社員が見てるんですよ。

まさか面が割れてる?
いや、
ぼくの女は社員には誰も会わせてませんが。

そういう意味じゃなくて、
自分たちが必死で働いて稼いだ金を、
あなたがどこで何に使ってるかっていうことは、
ちゃんと社員に伝わるっていう話です。

伝わりますかね。

もちろん伝わります。
あなたには見られているつもりがなくても、
社員は見てます。

すっごい美人てわけやないけど、
なかなか気の利くええ女ですよ。
堀内敬子って女優、わかります?
そっくりなんですわ。

‥‥
水瓶の話に戻りましょうか。

あっ、はい。

わたしには、
あなたはたいへん自分本位でわがままな人に見えてます。

ジコチュウってやつでしょ、
はい、そのとおり、
ヨメにもさんざん言われてますしね、自覚してます。
社員もみんなね、
先代がいるからがんばってくれているようなもんで、
誰もわたしについてきてくれるわけじゃないことも知ってます。

でも水瓶が理想なんですね、
まちがいないですか。
そこがブレたらもう知りませんよ。

そこはホンマです。
このままじゃあかんと思ってます。
バカな二代目ですけど。

バカっていうか、
まぁ‥‥典型的っていうか、
よくあるタイプですけど、
とにかく「水瓶」っていう切り口はおもしろい。

そこはぜったいブレません。

だったらわたしの提案は、
なりたい自分のイメージとリンクした経営指針書をつくることです。
指針書の中で、
社員にもその想いを伝えたほうがよろしい。

水瓶のことを社員にしゃべるんですか。

もちろんです。
あなたが本気で取り組める数少ないテーマのひとつでしょう。

いや、まぁ、
そうですけど。

宣言して約束することで、
モチベーションが一気に高まりますよ。
環境も整います。

いや、でも、あきません。
照れくさいですわ。

照れくさいことをやることが変わるってことですよ。

はい?

変わるってことには勇気がいるんです。

はい。
それはわかります。

勇気の定義は何ですか?

え?
急に言われてもわかりませんけど‥‥
困難や危機に直面したときに、
逃げずに立ち向かうことですか。

逃げずに立ち向かったら勇気ですか。

わかりません。

困難でも危機でも、
そのとき自分がどう感じているかがポイントです。
怖いと感じたり不安を感じたりする、
そんな
向かい風の感情から逃げずに立ち向かうことが勇気ですよね。

だからなんです?

照れくさいっていうのも向かい風の感情ですから。
勇気が必要だってことですよ。
だいたいあなたはこの会社に来てから
勇気を出して行動したことがありますか。

そんなこと、
あんまり意識したことないですけど、
苦しいからといって逃げるタイプじゃないですな。

苦しいのと勇気は関係ありません。
足を引っぱる感情ではありますが、
向かってくる感情ではありませんのでね。
そのときに「怖い」と感じていたかどうか。

怖いとかそういう感じはあまり‥‥

そうですよね。
だから「勇気を出して」とか言われてもね、
どうしていいかわからないですよね、ふつう。

はあ‥‥

日常の生活でね、
勇気を出すっていうのをいちばんわかりやすく言いますとね、
「恥ずかしい」とか「照れくさい」っていうときに、
それに逆らって行動するのが勇気ですよ。

恥ずかしいとか照れくさいときに、
それに逆らって行動‥‥

そうです。
それが勇気を育てる最短距離です。
戦闘はいりません。
これ、
とっても役に立つアドバイスなんで、
社員さんともぜひ共有して経営習慣にしてください。
ああ‥‥話が脱線しましたね。

なんの話でしたっけ?

水瓶ですよ。

ああっ、そうでした。

照れくさいと思うときこそやるんですよ。
いいですか。
こんどの経営指針書に必ず
「水瓶になりたい」っていうフレーズを入れて、
それを社員の前で発表してください。

はあ‥‥
いやでもやっぱり照れくさいですわ。

水瓶が理想でしょ。
なりたいんですかなりたくないんですか、
水瓶に。

あの‥‥水瓶になりたいんちゃいますよ。
水瓶のような大きな器の人間になりたいって言うたんです。

そうでしたっけ?


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